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ネオンよこちょうさつじんじけん

ネオン横丁殺人事件

海野 十三

「アサヒグラフ」1931(昭和6)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,095 字 · 26 页

青空文庫

「貴様にはもう頼まないや」

そういうと、一平は裏口へ出て行った。

戸外へ出ると一平は、あたりを気にしながら、早足にドンドン駈けだした。彼は電車道を越えて、大久保の長屋町の方に走りこんだが、それから露地をくねくね曲った末に、「おうの屋」と白字を染ぬいた一軒の質屋へ飛び込んだ。

「こないだ預けた銘仙の羽織をちょっと出して貰いたいんだが」

「ああ、その羽織なら、今うけだして持ってお帰りになりましたよ」

「しまった。そいつは質札を拾ってきやがったんだ。それに違いない。そいつは、どんな人間だったい、番頭さん」と、一平は真赤になったり蒼白になったりして、地団太を踏んだのだった。

その時薄暗い土間の隅から思いがけない声がした。

「芝居もどきで気がさしますが、その人間というのは、僕なんです」

「おお、あんたは、誰です」と一平は目を瞠った。

「羽織をかえして下さい。あれは私のだから」

「羽織は返しますよ、ほら。だが、その襟に縫いこんであった、この契約書は、僕に貸して下さい。僕は素人探偵の帆村荘六というものです」

「ウヌ!」獅子奮迅にとびついてくると一平を軽く左に外すと、再び一平が立ち直ってくるその頤のあたりを、ウーンと下から突きあげたアッパー・カット美事にきまって、哀れ一平は帆村の足許に長々と横に伸びた。