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ネオンよこちょうさつじんじけん
ネオン横丁殺人事件
海野 十三
「アサヒグラフ」1931(昭和6)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,095 字 · 26 页
「うん、果して事件だ。さっきのは、するとピストルの音だった」
帆村荘六の酔いは完全に醒めてしまった。彼はドシンドシンと、カフェ・アルゴンの扉に身をぶっつけた。扉は意外に苦もなくパタリと開いた。近所では、やっと気がついたものとみえて、窓をあける音や、人声や、下駄のかち合う音が、そこら近所に騒々しく湧きおこった。
帆村が一歩足を踏みこんだところで、靴先にカタリと当たる何物かを蹴とばした。懐中電灯で探してみると、それはダンディ好みの點火器だった。彼は手帛をだして、それを拾いあげると、ポケットに収いこんだ。これも事件の謎をとく何かの材料かもしれない。
店をとおりすぎ、洋酒瓶の並ぶうしろに、三階へつづく螺旋階段があった。二階へも別な階段があったが、二階と三階とを通ずる階段はなかった。帆村は螺旋階段に手をかけると、スルスル三階へ登っていった。
「やあ、――」
三階をのぼりきった室には、けばけばしい長襦袢を着た三十ぢかい肥肉の女が、桃色の夢がまだ漂っているようなフカフカした寝床の上に倒れていた。その横に、も一つ寝床があるが、そこに寝ている人の姿はなかった。
「君、しっかりなさい、どうしたんです」