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バークレーより
バークレーより
沖野 岩三郎
在线阅读沖野 岩三郎《バークレーより》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,041 字 · 12 页
と呼びかけられる程彼は物覚えがよい。声はやさしいが雲突くような大男だ。でっくり肥えて、顔は日に焼けて焦茶色である。爛々たる眼光は常に何物かを見つめている習性の持主だという事が誰にも知られる。どうしても年百年中荒潮の中に浪と闘う老船長である。年は五十四五でもあろう。
私は今日も此の老船長のような男に三百七呎の上空まで伴れて行ってもらった。彼は此の塔の訪問者の案内役であり、エレベーターのコンダクターであり、正午と六時のチャイムのミュージシャンでもあるのだ。エレベーターが停ると彼は、柔和な声で説明する。
『此の塔は高さ三百七呎、此の観望台は二百尺の位置にある。バークレー全市とサンフランシスコ湾と金門海峽が見える……向うの霞の中に見えるのがタマルパイの嶺、その左に連るのがゴールデンゲートの山々、その手前がエンゼルスアイランド、左に見えるがオークランド市……』
それから眼下の校庭を指ざしながら、あれが図書館、これが自然科学館、それが物理学教室……と、さも自分の財産ででもあるかの如く愛撫の情を含みながら云う。
説明が終った時、つめたい鉄柵を撫でながら私は言った。