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フシギなおんな

フシギな女

坂口 安吾

「新潮 第四八巻第五号」1951(昭和26)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,406 字 · 35 页

青空文庫

幸いに私の想像通りに太田成子を追うことによって、自然に男もつかまった。別に私の誇るべきところでもなんでもない。当り前の話ですよ。

だいたい、実際の殺人事件の犯人を当てるなどということは、決して文学者のやるべきことではない。むろん、人間には趣味というものがあるから、犯人はあれだ、いや、これだと世間話に興じるのは当り前だが、文学者がその表芸として犯人を当てるなどということは、笑止千万、バカな話であろう。

第一、私に犯人が、当るような事件は万に一ツぐらいのもので、今回がつまり万に一ツの場合であったのである。

だいたい普通の犯罪は流しの犯罪で、犯人は日本人八千何百万人の中の一人というバクゼンたるものである。探偵小説のように、登場人物二三十人の中に必ず犯人がいるという重宝なものではないし、おまけに、殺人の現場だって当局にだけしか分っておらず、新聞社すら、臆測によっているにすぎない程度である。そういうバクゼンたる材料をモトにして、素人タンテイが犯人を当てるなどということはありうべからざることに類する。

今回は珍しく犯人が犯人でない顔をして手記などを書いたから、私は気がつくことができたのであるが、しかし、別に私だけのことではなかろう。