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フシギなおんな

フシギな女

坂口 安吾

「新潮 第四八巻第五号」1951(昭和26)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,406 字 · 35 页

青空文庫

しかし、彼が医者へ走らずにすぐ警察へ走ったとしても、それを必ずしも矛盾と見ることも不可能なのである。人は慌てれば、そう筋の立つようにばかり行動できるものではない。むしろ慌てた行動に筋が立たんということは、彼は犯人でないという心証を与えるかも知れない。

しかし、それは刑事の側からのことで、ウソをついてる本人は、本来はもっと計画性があり、筋が立つようにやるはずだ。山口にそれだけの筋の正しい計画がないのは、彼は智能犯的な複雑な頭がないせいであろう。単純な頭なんだね。彼に接した記者連は、むしろそこに、ひッかかったのだろう。

「口はうるさかったが気持のよい旦那さん、おかみさん。私を本当によく可愛がってくれた。二三日前まで風邪をひいていました時、わざわざお医者をよんでくれた。その時本当にうれしかった。正月の休みのとき、元さん(殺した長男十一歳)をつれて浅草に行き映画とサーカスを見せた。元さんはサーカスを見るのは始めてであると本当に嬉しいようであった。紀子ちゃん(殺した長女十歳)とはよくコーヒーを飲みに行き私によく甘えていた」

犯行をごまかすためのウソだとだけ見るのは当らない。