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フシギなおんな

フシギな女

坂口 安吾

「新潮 第四八巻第五号」1951(昭和26)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,406 字 · 35 页

青空文庫

こういう表現のできる人間にはタイプがあるようだ。私を大事にしてくれるお父さんお母さん、などと時々涙ぐんで人々には語りながら、父や母をぶったり蹴ったりしている人間のタイプである。単純で、怒りっぽいが、涙もろくて妙に執念深いところもあるという凡庸なタイプ。それ自身は決して犯罪者のタイプではない。いくらでもザラにあるタイプだね。

私は山口を異常性格とは見ないのである。山口の本質はオールマイティを失うまいとする不安と、自信のなさ、劣等感だという。(週刊朝日)しかし、それは万人にあることだろう。そして社交としての着物をかなぐりすてると、突然ヤケを起してケツをまくって居直る。それも万人にあることだ。山口の場合はそれがドギツクでているから異常性格の所以だというが、これまた事と次第によっては万人がやりかねないものを蔵していると私は思うのである。

文士である私は、そのようにしか考えられないのである。ザラにあるタイプの人間がいきなりかかることを行うのではないのである。そこに至る特殊な道程があったのだ。小説はそのような道程を書くことでもある。するとそこに現れるものは平凡人が特殊な事情によってそうなっただけで、異常性格というものは、殆どないという結論だ。