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ベルリンだいがく
ベルリン大学
寺田 寅彦
「輻射 第一号」東京帝国大学理学部学生、1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,073 字 · 14 页
テレフンケン・システムの大きな蛇のようなスパークがキュンキュンと音を立ててひらめいては消えるのを見た。同じ団体にはいってヘッベルの劇場の楽屋見学をしたときは、奈落へ入り込んでモーターで廻わす廻り舞台を下から仰いだり、風の音を出す器械を操縦させてもらったりした。音を出すのは器械だが、音を風音らしくするのはやはり人間の芸術らしいと思われた。
三学期一年半のベルリン大学通いは長いようでもありまた短いようでもあった。たいそう利口になったようでもありまた馬鹿になったようにも思われた。引上げてゲッチンゲンへ移るときはさすがに名残惜しい気がするのであった。
マルシャル橋や王宮橋から毎日のように眺め見下ろしたスプレーの濁り水に浮ぶ波紋を後年映画「ベルリン」の一場面で見せられたときには、往年の記憶が実になまなましく甦って来るのを感じたのであった。(昭和十年五月『輻射』)