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ペスときょうだい

ペスときょうだい

小川 未明

「幼年クラブ」1948(昭和23)年1月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,272 字 · 7 页

青空文庫

」と、父親は考え顔をしました。

「もうかえらないよ。」と、急に秀吉は悲しくなって、声をふるわせました。

「そんなことはあるまい。小犬ではないからな。」と、父親はわらいました。

秀吉は父親のことばで、いくらか安心しました。そして明日になれば、お母さんはおきられるとおっしゃるし、雪の上をペスとあそばれると思うと、うれしかったのでした。

けれど、太郎だけは、ペスのことがさすがに気にかかるとみえて、戸口に立って口ぶえをふいたりしました。

「どこへいくものか。もう寒いからやすんだがいい。」と、父親は先に座を立たれました。続いて兄弟もへやへ入って、床に入りました。弟はすぐにねむったけれど、兄は容易にねむりつかれず、吹雪の中をさまよっているペスの姿を想像しました。

真夜中ごろでした。秀吉はふと目をさますと、兄をおこさないようにそっと床からぬけだして、犬小屋へいってみました。中はがらんとして空だったので、せっかくわすれた悲しみが、また新しく全身をしめつけました。しばらく、なきだしたくなるのをこらえて立っていると、遠く石をころがすような海の鳴り音がきこえました。

その夜のあけがたのこと、ゴトンと、なにか雨戸へあたる音がしました。