轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ボニンとうものがたり
ボニン島物語
久生 十蘭
「文藝春秋」1954(昭和29)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,772 字 · 41 页
着岸せしや、又海中にて破船せしや、便り無かりしとなり
其頃、同国の漁師ども、難風に逢ひて南海の絶島に吹きつけられしが、その島には、人一人も住まはず、五穀、満ち足り、平生、無人のところゆゑ、何によらず出来甚だよく、大勢にて久しくその島に逗留せしも、食物に差支へざりしとか。その後、五年目の春、順風に吹送られて故郷に戻りけるが、その島にて取りし、大きさ一斗も入るべき蛇の貝を持帰りける、
然るに、其村の百姓ども、家財道具を片附、一軒残らず一夜のうちに何処ともなく引越しけり。
漁師どものうち、其村出生の者、先達、村に立帰りし時、彼の島といふは、五穀豊饒、魚貝鳥獣多く、日本のやうに不自由することあらじ、一村のこらず引越すならば、主人、地頭と言ふも居らぬゆえ、頭を抑へられる事なし、安楽世界とは、彼の島の事ならんなどと言ひしよしなるが、一村を挙げて欠落したるところより推せば、漁師どもの話に釣られ、その島に行きしものならんと「風聞雉子声」に見えたり、
田中市太夫、深志甚十郎、七尾仁兵衛上書
一、依御下命、文政丙戌九年十月二日、閉伊郡釜石、藤代長右衛門船にて北郡大湊を開帆、同十五日朝、八丈島、同十八日青ヶ島、鳥島を見過し、同月廿二日、八丈島の南三百里の処にて御申聞せ候無人島に行当り申候