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ボニンとうものがたり
ボニン島物語
久生 十蘭
「文藝春秋」1954(昭和29)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,772 字 · 41 页
「一人は、昨夜、揚屋の組格子に細紐をひっかけて縊れて死んだ。あとの三人は明後日、国送りになる。おれが介添になって行くことになっている」
「そういうことなら、腹など切ってはいられまい」と深志が笑った。久太夫は首を振って、
「言わねばわかるまい、介添はいいのだが、家老の毛馬内が脇差を買えといって三両くれた。つまりは、送り人を途中で斬ってしまえということなのだ」
「おぬしの早合点ではないのか」と駒三郎が揶揄するようにいった。
「早合点どころか、そうなるべき訳があるのだ。漂民の一人は大湊の船持ちで、思慮のある男だから、深く慎んで、滅多なことは言いださぬが、お上のほうでは、舟子どもが漂着したという島は、先年、物貨を取蒐めたその島だということを見ぬいている。のみならず、父達が島へ残してきた漁師原といっしょになっていたらしい形跡もある」
深志が「うむ」と呻いた。駒三郎は癇走った顔になって、叫ぶようにいった。
「おぬしは、毛馬内に金を返して、腹を切ってしまえばそれですむのだろうが、おぬしが辞退すれば、ほかの人間が行って斬る。そのほうはどうする」
久太夫は駒三郎の顔を見返し、