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メメント モリ
メメント モリ
田辺 元
「信濃教育 第八五八号」1958(昭和33)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,397 字 · 19 页
もしただ生のみに執着するならば、かえって反対に死を招くという矛盾に陥ると同時に、自ら進んで死する自己抛棄の実行は、生の自己矛盾を脱出せしめることができる。もとよりそれは単に、みずから自由に死する能力が人間に具わるという知識を意味するのではない。進んでその能力をはたらかせ実行するとき、始めて不思議にも生死交徹相転換してその相入相即が実証せられるのである。生死を超える絶対者は、二律背反を転換的に統一して、死における生を信証せしめ、死復活こそが死に脅されることなき真実の生に外ならざることを悟らせる慈悲であるといわなければならぬ。それは生の直接存在を否定転換して死復活の生に翻し、もって本質的生を遂げしめる原理であるから、絶対無即愛といわれるわけである。
しかしながら、単にこの絶対無即愛の恩恵に依って死復活の転換を行ぜしめられるだけでは、各現在において、いわゆる「永遠の今」といわれるべき瞬間の信証が、成立するのみであって、その復活的生の内容がなんらか持続するものとして具体的に充実せられることはないであろう。それでは、たとい死に脅される生の不安が解除せられるとしても、積極的に生の本質を恢復し、死苦の中に生きる喜あらしめるものがないといわねばならぬ。