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ヤミろんご

ヤミ論語

坂口 安吾

「世界日報 第五五二号~第六九二号」1948(昭和23)年2月23日~7月12日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,308 字 · 36 页

青空文庫

外套をスラれるというのは珍しい。

この五日にも、さる出版社の連中六人がやられた。社の会の帰途十時ごろ、神田駅のプラットフォームで集団スリにとりかこまれて、集団タックルの波状攻撃をうけて全滅したのである。プラットフォームにはほかに乗客もたくさんいて、このギャングどもをどうすることもできないとは、悲しい。その翌日、偶然その社へ立寄ったら、我々もついにギャングに襲われる身分に立身しまして、などとシカメッ面で力んでいたが、おかげで私の原稿料は当分支払い延期ということになり、誰が被害者だかわからない。

私の知人でスラれていない人間は先ず見当らないのであるから、東京都の住民はスラれない人の方が珍しいのかも知れない。

集団スリの一味四十二名がつかまって、手先の大部分は浮浪児だ。

そこで問題はスリという犯罪よりも浮浪児の救済処置が重大な課題となるのであるが、収容所へ送っては逃げられ、同じことを繰返しているのが現状のようである。

浮浪児は一日千円のカセギがあって、サシミやスシを食い、ウナギや洋食や支那料理で満腹しているから、収容所で特別三合の配給を与え、オヤツをだしてやってもダメだという。