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ヤミろんご

ヤミ論語

坂口 安吾

「世界日報 第五五二号~第六九二号」1948(昭和23)年2月23日~7月12日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,308 字 · 36 页

青空文庫

大衆は正直

街頭録音の農林大臣が、私もヤミ米を食べていますと言って群集の歓呼をうけた。大衆は理論はないが、正直なものだ。日本の政治家は自分はヤミをやらないような顔をして政治を押しつけていた。それで国民が納得できるものではない。

然し、農林大臣の正直らしい告白も、大臣としてでなく私人としてヤミをやってる、とあっては怪しいものだ。私人の腹の裏側に大臣という霞を食う腹があるのかな。このアイマイな表現から察せられることは、窮余の告白であるにすぎず、ヤミをやらずに生きられぬ現実のマットウな認識には欠けており、つまりこの現実の矛盾を合理化する政策の成算はもたないことが察せられる。大衆の歓呼の悲痛に切実な現実を三思して、ハッタリから着実な政策へ、心魂を捧げてもらいたいものだ。

職業野球が大衆の興味をあつめはじめている。大衆は正直である。時代の嗜好がスポーツへ動くわけではない。職業野球の内容が充実したから、大衆の興味があつまるのである。

将棋がそうだ。

木村が十年不敗のころは、老朽八段をズラリと並べて、一向に大衆の注意をひかなかった。升田が現れ、頻りに新人の擡頭があって、大衆は正直に惹かれるのである。