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ラジオ・ドラマしけん

ラジオ・ドラマ私見

岸田 国士

「ラジオ・ドラマ講座第二巻」山根書店、1952(昭和27)年4月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,140 字 · 7 页

青空文庫

という意味は、「耳で聴く」という観念が先に立つのはよいが、そのために「耳を通して他のあらゆる感覚及び精神に愬える」という最も本質的なラジオ文学の要素を閑却してはならぬということである。例えば、対話による描写を主とすることは、一見ラジオ・ドラマの本質らしく考えられるが、しかし、その対話が、俳優の直接表情によつて生かされるような種類のものは、真にラジオ的とはいえないのであつて、寧ろ対話そのものが、おのずから明確な表情を連想させ、同時に人物及び生活の雰囲気を髣髴と浮び出せるように書かれていなくてはならぬのである。

もう一つ大切なことは、ラジオ・ドラマに於いては、舞台劇や映画などと同様、「誘導的」なリズムを生命とするのだから、眼に見えないためにもどかしさを感じさせたり、そのために、幻想を運ぶ心理的「音色」の効果を鈍らせてはならぬのである。語調語勢の波動が、緩急抑揚の技術を滞りなく生かして行かねばならぬ。

さて、こういうラジオ・ドラマの特殊技巧以外に、私は、内容的な精神美と作家的な「表現力」を要求する。勿論放送用として、あくまでも正しい意味の普遍性は望ましいけれども、そうかといつて、大衆向きを口実にする卑俗な趣味はなんとしても排斥したい。