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レモンのはなのさくおかへ

レモンの花の咲く丘へ

国枝 史郎

「レモンの花の咲く丘へ」東京堂書店、1910(明治43)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 71,016 字 · 142 页

青空文庫

(大声)さあ女よ笑って見せろ! (女子声なく笑う)お前の笑を得んがため、諸国の憐れな令人達は、大理石の館へ集った。そして今そこで眠っている。(笑う)笑は罌粟の畑をすぎて、青海原へ沈み行くのに、何も知らぬ領主の君。(間)さても白いお前の肌(と女をしげしげと眺め)ローマの朝の白露が野茨の花へ降ったようだ。鴻の鳥の胸毛のようだ。建国の第一の朝に、汚れを知らぬ谷の洞から、湧き上がった霧のようだ。(やや悲しげに)それが今や汚される。(罌粟畑を眺め)この広い血の海で、その白無垢が赤く染まる。(竪琴を眺め)どのように銀の調が、血と暗とを喜ぶだろう――。女よ再び暗と血薔薇の呪詛を受けよ。(と短嬰ヘ調をかき鳴らす。琴と共に「暗と血薔薇」の歌を歌う)

暗がわが身を取りかこむ、

裸身なれど恥らわじ。

……………………

抱く男のやわ肌を

燃ゆる瞳にさがさばや

罪が巣くいし血薔薇とて、

恋の生身を刺すとかや、

暗なれば血は見えずして。

……………………

(この歌と共に、女子は弱々しく歩む。Fなる魔法使いはなお歌い弾く)

一夜の情にほだされて、

大理石なる清き身を

罪に渡すも男ゆえ。

砒素の歌……………