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レーリーきょう(ロード レーリー)
レーリー卿(Lord Rayleigh)
寺田 寅彦
「岩波講座 物理学及び科学」岩波書店、1930(昭和5)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,439 字 · 55 页
この病気は時々再発の気味があったので、再び転養のためにホンブルク(Homburg)に行った。そこで毎午前はマクスウェルの色の図に対する面倒な対数表計算をやった。夫人が一々験算をした。レーリーはこういう計算はあまり得意でなかったのである。ホンブルクからハイデルベルクへ行ってクインケ(Quincke)を訪ねた。ク教授は新醸のワインを取出して能書きを並べた。スイス行を思い立ってムルレン(Murren)まで行ったら病気が再発して動けなくなった。四日目に少しよくなったので、四人舁の椅子にのって山を下り一路ケンブリッジに帰った。それで次のクリスマスの休暇にはバス(Bath)に行って温泉療養をすることになった。浴槽の中で掌を拡げたまま動かすと指が振動する現象を面白がった。その時に浮んだ考えが三十年後の論文となっている(全集、五、p. 315)。
一八八四年カナダのモントリオルで大英学術協会が開かれたときにレーリーが会長に選ばれた。当時彼は四十二歳、こんなに若くて President になった例は珍しかった。彼は承諾はしたが、しかしその Presidential Address が苦になり、その予想にうなされ、そうしてひどく悄気たりした。