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ワーニカとターニャ
ワーニカとターニャ
宮本 百合子
「新青年」1931(昭和6)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,685 字 · 6 页
――
ワーニカは、わいわい云いながら入口で防寒靴をぬいでる一かたまりの男女学生の中に、見なれた円い緑色の毛糸帽を見つけた。
モスクワには、そんな緑色の帽子をかぶってる女がうんといるわけなんだが、ワーニカは、例えそれが五つかたまってたって、見そこなわないだろう。
――どうしたい? ターニャ!
うしろから、その緑色帽の肩へ自分の肩をぶつけてワーニカが云った。
――昨夜、お前はよく話したな。
党員や学生、労働者たちはみんな互に「お前」で話す。ターニャは党員じゃない。けれど、自動車工場に働いてる労働者の娘だ。モスクワ大学男女学生が、赤色学生連盟から『赤色学生』っていう雑誌を出してる。昨夜は、その発行所で、大学寄宿舎生活についての討論があった。自己批判だ。ターニャはその時、おかっぱを活溌にふりながら、自習時間がやかましいことや、自治に対してみんなが無責任だ。いたずらに外套をかくしたり本をかくしたりする者もある。(大学寄宿舎は男女学生一緒。室だけきっちり分れてる。)我々はそんな子供なのか? というようなことを話したのだ。ターニャも学生委員(衛生部)の一人なんだ。