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ウィタ・セクスアリス
ヰタ・セクスアリス
「昴」1909(明治42)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,941 字 · 119 页
どちらかと云えば軟派で、女色の事は何でも心得ているらしい。さればとて普通の軟派でもない。軟派の連中は女に好かれようとする。鰐口は固より好かれようとしたとて好かれもすまいが、女を土苴の如くに視ている。女は彼の為に、只性欲に満足を与える器械に過ぎない。彼は機会のある毎にその欲を遂げる。そして彼の飽くまで冷静なる眼光は、蛇の蛙を覗うように女を覗っていて、巧に乗ずべき機会に乗ずるのである。だから彼の醜を以てして、決して女に不自由をしない。その言うところを聞けば、女は金で自由になる物だ。女に好かれるには及ばないと云っている。
鰐口は女を馬鹿にしているばかりはでない。あらゆる物を馬鹿にしている。彼の目中には神聖なるものが絶待的に無い。折々僕のお父様が寄宿舎に尋ねて来られる。お父様が、倅は子供同様であるから頼むと挨拶をなさると、鰐口は只はあはあと云って取り合わない。そして黙ってお父様の僕に訓戒をして下さるのを聞いていて、跡で声いろを遣う。
「精出して勉強しんされえ。鰐口君でもどなたでも、長者の云いんさることは、聴かにゃあ行けんぜや。若し腑に落ちんことがあるなら、どういうわけでそう為にゃならんのか、分りませんちゅうて、教えて貰いんされえ。