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ウィタ・セクスアリス
ヰタ・セクスアリス
「昴」1909(明治42)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,941 字 · 119 页
「何時だ」
「七時だ」
「まだ早い」
古賀はくるりと寝返りをして、ぐうぐう寝る。僕は飯を食って来る。三十分になる。八時には日課が始まるのである。古賀を起す。
「何時だ」
「七時三十分だ」
「まだ早い」
十五分前になる。僕は前晩に時間表を見て揃えて置いたノオトブックとインクとを持って出掛けて、古賀を起す。
「何時だ」
「十五分前だ」
古賀は黙って跳ね起きる。紙と手拭とを持って飛び出す。これから雪隠に往って、顔を洗って、飯を食って、教場へ駈け附けるのである。
古賀鵠介の平常の生活はこんな風である。折々古賀の友達で、児島十二郎というのが遊びに来る。その頃絵草紙屋に吊るしてあった、錦絵の源氏の君のような顔をしている男である。体じゅうが青み掛かって白い。綽号を青大将というのだが、それを言うと怒る。尤もこの名は、児島の体の或る部分を浴場で見て附けた名だそうだから、怒るのも無理は無い。児島は酒量がない。言語も挙動も貴公子らしい。名高い洋学者で、勅任官になっている人の弟である。十二人目の子なので、十二郎というのだそうだ。
どうして古賀と児島とが親しくしているだろうと、僕は先ず疑問を起した。