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ウィタ・セクスアリス
ヰタ・セクスアリス
「昴」1909(明治42)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,941 字 · 119 页
杉勢の弟子で、五軒町に住んでいる娘である。代稽古に来る娘が病気なので、好意で来てくれたということであった。そのうちその琴の上手な娘が、お母様に褒められたのを聞いて、それではいつか往って弾いて聞かせようと云った。
それから折々内に寄るので、僕が休日に帰っていて落ち合うこともある。子供の時に Hydrocephalus ででもあったかというような頭の娘で、髪が稍や薄く、色が蒼くて、下瞼が紫色を帯びている。性質は極勝気である。琴はいかにも virtuoso の天賦を備えている。これが若し琴を以て身を立てようとする人であったら、師匠に破門せられて、別に一流を起すという質かも知れない。
この娘が段々お母様と親密になって、話の序に、遠廻しのようで、実は頗る大胆に、僕の妻になりたいということをほのめかすのである。お母様が、倅も卒業すれば、是非洋行をさせねばならないが、卒業試験の点数次第で、官費で遣られるか、どうだか知れないと話すと、わたくしがお金を持っていれば、有るだけ出して学資にして戴きとうございますなどという。
お母様にもこの娘の怜悧なのが気に入る。そこで身元などを問い合わせて見られる。