轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ウィタ・セクスアリス

ヰタ・セクスアリス

森 鴎外

「昴」1909(明治42)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,941 字 · 119 页

青空文庫

主人がこれは面白い御注文だと云って笑う。奥さんが女中を呼んで言い付ける。

令嬢はこの時まで奥さんの右の方に、大人しくすわって、膝に手を置いておられた。ふっくりした丸顔で、目尻が少し吊り上がっている。俯向かないで、正面を向いていて、少しもわるびれた様子がない。顔にはこれという表情もなかった。それが蕎麦掻の注文を聞いて、思わずにっこり笑った。

僕は蕎麦掻の注文をしてしまって、児島の橘飩にも譲らないと思って、ひとりで可笑がった。暫くは蕎麦の話が栄える。主人も蕎麦掻は食べる。ある時病気で、粒立った物が食えないので、一月も蕎麦掻ばかり食っていたと云う。奥さんが、あの時はほんとに呆れたと云って、気が附いて僕にあやまる。

僕は蕎麦掻を御馳走になって帰った。主人夫婦に令嬢も附いて、玄関まで送られた。

帰道に安中が決答を促したが、僕は何とも云うことが出来ない。それは自分でも分らないからである。僕はお嬢さんを非常な美人とは思わない。しかし随分立派なお嬢さんだとは思っている。品格はたしかに好い。性質は分らないが、どうもねじくれた処なぞが有りそうにはない。素直らしい。そんなら貰いたいかと云うと、少しも貰いたくない。