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ひとつのめばえ
一つの芽生
宮本 百合子
「新日本」1918(大正7)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,627 字 · 29 页
けれども自分は、天にも地にも三人きりほかいない弟達の一人である彼の、生命に関しての予言を得るほど、精錬され、白熱されたものとして自分の魂を自信することは、とうてい出来なかった。
それはあまりに大事すぎる。ちょっとでもそんな風に考えてみるのさえ、自分としては大それたことだと感ぜずにはいられなかった。
彼にも、父や母にもすまないような心持になりながら私はどうしても消えない妙な心持と苦しい争いを続けた。
二
翌朝になって、熱が七度台に落ちた。けれども、また直ぐに元ぐらいまで昇ってしまったので、私共の喜びもほんとうの糠(ぬか)よろこびになった。
医者が来て、「腸胃熱でなければ、この頃はやっている、無名の熱かも知れません、もう少し様子を見ましょう」と云って心臓のためにジガレンを調(ととの)えてくれた。
私が十六の夏にやはり訳の分らない熱をまる一月出しつづけた。そして、まるで夢中になってしまったことさえあってもこうやってすっかりなおったばかりでなく、病気以前と比較するとすべての生理状態が良くなっているから、「道っちゃんもそうなのだろう」と、云うものもあった。