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せんきゅうひゃくにじゅうしちねんはるより

一九二七年春より

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,982 字 · 21 页

青空文庫

細い声を無理に出して見たり低い声を出したりしてうたう。

つれの男迷惑そうにしてだまって居る。

「いくらかのぼりだろうかな」

「ならし六度の勾配になって居ります これからずーっと上りになります」

「ふーむ、ずーっとね」その男松川やの細君の手真似をする――手をずーっととあげて。やがて、ギーアをかえ爆音つよし

「ほらのぼりだな、音でわかっるね、こういう音は馬力を出して居るに違いない 音でわかりますよ」

うるさい、うるさい

H・Kのいたずら

文学少女が来る。

「私小説かきたいんですが」

「あなた恋愛をしたことがありますか」

「いいえ」

「恋愛もしないで小説かこうなんて――じゃ例えばですね、私を恋の対象としてですね、あなた私とこうして居るの、心持いいですか?」

「ええ」

そんなことで、娘くたくたにしてしまう。やがてつれて箱根などにゆく。

四月二十八日 那須

○まだ若葉どころかやっと芽のあま皮がむけたばかり

○笹芝にまじって春輪どうの小さい碧い色の花が咲いて居る。

○山の皺にまだ雪アリ

○四五月頃の温泉あまりよくなし。

○枯山に白くコブシの野生の花 遠くから見える景色よし