轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ひとりふたやく
一人二役
江戸川 乱歩
「新小説」春陽堂、1925(大正14)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,740 字 · 14 页
夜更けに寝惚け眼で見たのだからそれも無理ではない。Tの方でも十分用心をして、新しい着物の縞柄なども、以前からあるのとまぎらわしい様なものを選んでいたし、附髭は床に這入るまで、掌や、ハンカチなどで隠す様にした。で、結局、Tのこの奇妙な計画はまんまと首尾よく成功したんだ。
床の中でね、彼等は電燈を消して寝る習慣だったから、真暗な床の中でだね、Tはやっと髭を押えていた手を離した。で、つまり、当然だね、その異様な毛髪の感触が、細君を驚かせた。
「アラ、…………」
細君が、可愛らしい悲鳴を上げたのは、こりゃ決して無理はない。同時にTとしては、ここが最も難しい所だ。彼は細君が髭の存在を認めたことが分ると、早速向きを転えて、二度と髭に触らせない様に、蒲団を被って、グウグウ空鼾をかき出したものだ。
ここで、細君が怪しんで、あくまで穿鑿をしようものなら、Tの計画は、すっかりオジャンだ。空鼾をかきながら、彼はもうビクビクものだったというね。ところが、細君、案外暢気なもので、何か感違いしたとでも思ったのか、そのままじっとしている。暫く待っていると、スウスウと優しい鼾が聞えて来た。