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ひとつぼかん

一坪館

海野 十三

未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,902 字 · 56 页

青空文庫

「足はどうですか。まだ痛みますか」

「すっかりなおった。君があのとき、すばやくかけつけて、すぐ病院につれていってくれたから、わるいばいきんも入らなかったんだ。だからこんなに早くよくなった。ありがとう、ありがとう」

「それはよかったですね。とにかく神さまがぼくをヘーイさんにひきあわせてくだすったのだと思って、かんしゃしています」

「ほんとだ。ふしぎなえんだね、ゲンドン」

「ヘーイさんの好きなお酒でも一ぱいあげたいけれど、今は何もないんでね」

「いらない、いらない、酒はぼくの方にうんとある。持って来てあげてもいい」

「ぼくは、酒をのみません」

「ああ、そうか」少佐は、それはざんねんだという顔をしたが、それから彼は改まった調子で「この店は、よく売れるかね」と聞いた。

源一は、正直にちかごろすっかり売行のわるくなったことをのべた。値段を下げても買い手が来ないことをいった。

少佐はそれを聞いていて、うなずいた。

「花を売るためには、店をもっと美しくしなくてはならない。この店のテントはよごれていけない。なぜ近所のように家をたてないのか」

少佐はそういって、たずねた。そこで源一は、この一坪に家をたてるには一万円かかるが、とてもそんな金を自分はもっていないのだといった。