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ひとつぼかん

一坪館

海野 十三

未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,902 字 · 56 页

青空文庫

「すみません」

源一は、強く少佐の手をにぎりかえした。

昔、すこしばかり親切にした酒屋の小僧を忘れずにいてくれるヘーイ少佐。

それから少佐の奇禍に通りあわせて、ほんのすこしのきてんをきかせて助けたことを、恩にきていてくれる少佐。そしてこんなりっぱな一坪館を建ててくれた少佐。――少佐の人情のあつさに、源一は感謝のことばを知らないほどだった。

「ベッドは、いつ三階へあげますか」と、源一は少佐に聞いた。

「今、上にあげよう」

「あ、そうですか。ベッドはもうトラックで持って来たんですか」

「いや、ジープにのせて来た」

「え、ジープに、まさか、ジープにベッドがのるもんですか。そして三階にあげるにはどうするんですか。人足を十人ぐらい集めるのでしょう」

「いや、ぼく一人でたくさんだ」

「あんなことをいっている。ヘーイさんはお茶目さんだからなあ」

「うそじゃないよ。いっしょに来てみたまえ」

少佐はそういって、外に待たせてあるジープの方へいった。

源一も三人力を出すつもりで外へとび出した。すると少佐はジープの中へ上半身をさし入れて、ごそごそやっていたが、やがて中から一抱ある布ぎれ細工のものをとりだした。