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ひとつぼかん

一坪館

海野 十三

未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,902 字 · 56 页

青空文庫

「はっはっはっ。これはおそれいった。やっぱり商売の腕は、矢口家のおかみさんにはかなわねえや」と、源一は頭をかいて、

「その新しい商売ですがね、じつは、私も考え中なんですが、ひとつ私の方の仕事へのってくれませんかね」

「どんな仕事だい、お前さんのもくろんでいるのは……」

「じつは、この一坪館を建てなおして、もっと上へのばしたいのですがね。つまり十階か二十階ぐらい高いものにしたいのです。そして各階に、いろいろ楽しい店を開くのです。どうです、おもしろいでしょう」

「でも大丈夫かね、そんなにひよろ高い煙突みたいな建物がつくれるかしらん」

「きっと出来ますよ、大丈夫です。二十階の一坪館ができてごらんなさい。銀座の新名物になりますよ。どうです、おかみさん。これをいっしょにやりませんか」

「おもしろそうだけれどね、台風が来たら吹きとびやしないかね。あたしゃ心配だよ」

「たぶん大丈夫です。このことはいずれ、よくしらべておきます」

源一は、ヘーイ少佐が日本へかえって来たら相談しようと思った。少佐は建築工学に明るいのだったから。

「しかし、なにしろたった一坪だから、二十階つくってみたところが、いくらの広さでもありやしないやね」