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いったとはは

一太と母

宮本 百合子

「女性」1927(昭和2)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,507 字 · 21 页

青空文庫

いろんなものの載っている神棚があり、そこに招き猫があった。

「ヤア、猫がいらあ」

と一太は叫んだ。そして、どこかませた口調で、

「あれ、拵えもんですね」

と云った。

「生きてるんだよ」

「嘘!」

「本当さ、今に鳴くから待っといで」

「本当? 本当に鳴くかい? あの猫――嘘だあい」

「ハハハハハ馬鹿だね」

そんな問答をしているうちに、一太は残りの納豆も買って貰った。一太は砂埃りを蹴立てるような元気でまた電車に乗り、家に帰った。一太は空っぽの竹籠を横腹へ押しつけたり、背中に廻してかついだりしつつ、往来を歩いた。どこへ廻しても空の納豆籠はぴょんぴょん弾んで一太の小さい体を突いたりくすぐったりした。一太がゆっくり歩けば籠も静かにした。一太が急ぐと籠もいそぐ。一太が駈けでもしようものなら! 籠はフットボールのようにぽんぽん跳ねて一太にぶつかった。おかしい。面白い。一太は気のむくとおり一人で、駈けたり、ゆっくり歩いたりして往来を行った。

一太は玉子も売りに出た。

玉子のときは母親のツメオが一緒であった。玉子を持って一太が転んだり、値段を間違えたりするといけないからであった。こうと思う家の前へ来ると、ちょっと手前でツメオは一太にしっかり風呂敷包みを持たせた。