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いったとはは

一太と母

宮本 百合子

「女性」1927(昭和2)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,507 字 · 21 页

青空文庫

手許を熱心に眺め、口の中に唾を出していた一太は喫驚して母親を引張った。

「あらあら、おっかちゃん、大きくなって来たよ、これ」

「ほら大きくなるぞ……大きくなるぞ」

小さかった白い餅のようなものは、もりもりもりもりと拡って、箸でやっと持つ位大きく扁平な軽焼になった。

「さ、ちっと冷してから食うと美味いよ。芳ばしくて。――自分で焼いて見なさい」

一太は片手で焙りながら、片手で軽焼を食った。とても甘く、口に入ると溶けそうだ。

「本当に美味しいや」

「本当とも」

一太は、

「もういい? もう返してよござんすか」

と云いながら焙り出した。

「こんどのおっかちゃんに上げようね」

一太の母は、陰気に気落ちのした風でそっちへ目をやりながら、

「いいよ、先生に上げるものですよ」

そして、

「その方はお偉い先生で御本をお拵えなさるんですよ」

と云った。

「ふーん……」

一太は、考えていたが、

「じゃああの本も拵えたんですか」

と藪から棒に尋ねた。

「どの本だね」

「あの本――少年倶楽部……僕よんだことあるよ、島村大尉ってとても勇ましいんだね」

「ハハハハそれは違うよ、それは別の人が拵えたんだよ多勢で……ハハハハハハ」