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いっぽんのぎんのはり
一本の銀の針
小川 未明
「少年倶楽部」1927(昭和2)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,687 字 · 10 页
二日たっても、三日たっても、せがれの乗った船はもどってきませんでした。ある日のこと、その船の破片が波に打ち寄せられて、浜辺に上がりました。それを見たときに、どんなにおじいさんは、悲しんだでありましょう。せがれの女房はあまりの悲しみから、ついに病気となり、それがもととなって死んでしまいました。
二人の子供は、父を失い、母に別れて、そのときから、おじいさんに育てられたのであります。海の上を吹いてくる風が、コトコトと窓の戸をたたく音を聞くと、おじいさんは、それでもせがれが生きていて帰ってきたのではないかと耳を傾けました。また、夜中に、波の音が、すすり泣くように、かすかに耳にひびくと、おじいさんは、せがれの女房のことを思い出しました。それにつけてもおじいさんは、二人の孫たちをかわいがったのであります。
月日は、いつのまにかたってしまいました。兄と妹の二人は、仲よく、海岸の砂原で、白に、黄に、いろいろの花をつんだりして遊んでいますうちに、大きくなりました。
二人は、両親がなかったけれど、おじいさんがかわいがってくだされたので、幸福でありました。
兄は、だんだん年を取ると、自分もどうか船乗りになりたいと思いました。