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いちまいのきっぷ
一枚の切符
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1923(大正12)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,503 字 · 27 页
そこで、左に順序を追って、私の推理の跡を記して見ることにする。
前に申した様に、出発点は、PL商会の受取切符である。事件の前日、恐らく前夜深更に、急行列車の窓から落されたであろう所のこの切符が、何故、五六貫目もある重い石塊の下敷になっていたか。というのが、第一の着眼点であった。これは、前夜PL商会の切符を落して行った所の列車が通過した後、何者かが、その石塊を其処に持って来たと判断する外はない。――汽車の線路から、或は、石塊を積載して通過した無蓋貨車の上から、転落したのではないことは其の位置によって明かである。――では、何処からこの石を持って来たか、可成重いものだから遠方である筈はない。さしずめ、博士邸の裏に、下水を築く為に置いてある、沢山の石塊の内の一つだということは、楔形に削られたその恰好から丈けでも明かである。
つまり、前夜深更から、その朝轢死が発見されるまでの間に、博士邸から轢死のあった個所まで、その石を運んだものがあるのだ。とすれば、その足跡が残っている筈である。前夜は雨も小降りになって、夜半頃にはやんで居ったのだから、足跡の流れた筈はない。