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いっとう

一灯

太宰 治

太宰治回忆八年前被哥哥臭骂差点毕不了业,但他说要点亮“贫者一灯”。故事从挨批开始,却暖得让人想哭。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,052 字 · 7 页

青空文庫

兄は、そう言ってハンケチで顔の汗を、やたらに拭いた。

おでんやでも、大騒ぎであった。モオニングの紳士が、ひどくいい機嫌ではいって来て、

「やあ、諸君、おめでとう!」と言った。

兄も笑顔で、その紳士を迎えた。その紳士は、御誕生のことを聞くや、すぐさまモオニングを着て、近所にお礼まわりに歩いたというのである。

「お礼まわりは、へんですね。」と私は、兄に小声で言ったら、兄は酒を噴き出した。

日本全国、どんな山奥の村でも、いまごろは国旗を建て皆にこにこしながら提燈行列をして、バンザイを叫んでいるのだろうと思ったら、私は、その有様が眼に見えるようで、その遠い小さい美しさに、うっとりした。

「皇室典範に拠れば、――」と、れいの紳士が大声で言いはじめた。

「皇室典範とは、また、大きく出たじゃないか。」こんどは兄が、私に小声で言って、心の底から嬉しそうに笑い咽んだ。

そのおでんやを出て、また、別のところへ行き、私たちは、その夜おそくまで、奉祝の上機嫌な市民の中を、もまれて歩いた。提燈行列の火の波が、幾組も幾組も、私たちの目の前を、ゆらゆら通過した。兄は、ついに、群集と共にバンザイを叫んだ。