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ひとつぶのあわ
一粒の粟
宮本 百合子
「解放」1920(大正9)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,083 字 · 7 页
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或る芝生に、美くしく彩色をした太鼓が一つ転っていた。子供が撥を取りに彼方へ行っている間、太鼓は暖い日にぬくまりながら、自分の美くしさと大きさとを自慢していた。
すると丁度その時頭の上を飛んで行った小鳥が、何かひどく小さいものを彼の傍に落して行った。
気持の好い空想を破られ、それでムッとして見ると、薄茶色の粟が一粒いる。自負心の強い太鼓は忽ち小癪な奴だと思った。俺が折角いい心持で美くしい体を日に暖めているのに、何だ、此那見すぼらしい体をしている癖に突当ったりして! 其処で彼は
「おいおい、気をつけてくれ、俺が此処にいるよ」
と云った。
「私が何かしましたか」
「何かしましたか? 怪しからん。切角俺が好い心持でいる処を何故驚かせた」
「其は悪うございました御免下さい。けれども私は貴方を喫驚させる為に落ちたのではありません。私は此処で生えなければならないのです。御気に障ったら御免下さい」
「生えなければならないと? 生意気な事を云うな、第一お前のなりを考えろ、小さくて、見栄えもしない茶色坊主で、フム何が出来る。俺を見ろ、大きいぞ、素晴らしく美くしいぞ、如何うだ此の光る金色を見て羨しくないかハハハ其にお前なんかは蟋蟀ほどの音も出せないじゃあないか、まあまあ俺の見事な声を聞いてから目を廻さない要心