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ひとつぶのあわ
一粒の粟
宮本 百合子
「解放」1920(大正9)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,083 字 · 7 页
又或る人は、同じ目的で、今の主題の第一音を真先に叩こうとしている。
どちらの態度も、只其だけであったら寂しいのだと思う。
人類が生活している間中には、どんなに早く駈け抜けて仕舞おうとしても馳け切れないものがあり、又、どんなに自分では縁を切った積りでも、生命のある限り他人にはなり切れないものが、奥底の底に在るのではあるまいか。
何と云っても、本当のものは、死なない。今や昔と云う言葉を超えて動いている。私共は其を畏れ敬う心だけは、どうか失い度くないと希う。
人類の生活のより深正な幸福の希望や、正義へ向いての憧憬は時代から時代を貫いているのだ。三稜鏡は、七色を反射する。けれども太陽は、単に赤色に輝くものでなく、又紫に光るものでもない事を私共は知っている。一部分宛なのだ。勿論部分は尊い。然し、友よ、私は、只一部分丈に視野を画って、今は、青い時だ、俺はその青い中でも一番強い青色を持っているのだぞ、と云って誇る心掛にはなりたくないと思う。
青でもよい。赤でもよい。何でもよいのだ。只過ぎて行く瞬間の呼声に、くらまされなければ救われる。本道に即いて行ければ充分の感謝である。