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まんのし

万の死

小川 未明

「新児童文化 第4冊」1949(昭和24)年11月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,457 字 · 9 页

青空文庫

「ほほう、どんなふうにやさしかったのか。」

この書記ばかりでなく、一同が、意外の返事に、おどろいて、少年を見ずにいられませんでした。

「おれたち、もらいがなくて帰れば、親方にしかられるだろう。そんなとき、おじさんに頼むと、お金をくれたんだ。」

「おらあ、三日も飯食わんとき、助けてもらったんだ。」と、別の少年がいいました。そして、ここにいるものはみんな万にめぐみをうけたものばかりだということがわかりました。

それは、長い間、なぞであった万の、金持ちから借金する理由が、これらの人たちに施すためのものであったことを知らせたのであります。

松林の中に、万は、母親と並べて葬られました。その土色のまだ新しい墓の前には、日ごとに、だれがあげるものか、いつもいきいきとした野草の花や、山草が手向けられていました。また、月の明るい晩など、このあたりから起こる笛の音は、万の霊魂をなぐさめるものと思われました。そして、村人の耳に、切々として、悲しいしらべを送るのでした。心ある人は、人間の一生というものを考えました。

彼の本名は、万三とか、万蔵とかいったのであるが、村の人々には、万で、通っていたのであります。