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おもと

万年青

矢田 津世子

「婦人日本」毎日新聞社、1942(昭和17)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,043 字 · 13 页

青空文庫

隠居を中にしての競争相手に、福子は入っていなかった。

「無邪気な可愛い方!」

と、みんなは福子を見ると、やはり、心がやわらぐのだった。

福子には、そうした嫂たちの気持が飲みこめなかった。隠居に取り入って何をしようとするのだろう。そんなことでお互いに気持を摺りあっている嫂たちの姿が、何か哀しかった。

「ねえ、おばあさまって、何んだかお可哀相な気がするの。」

福子は、つい、良人へこう言った。

「どうしてさ。」

良人は不意打ちにあって、ちょっとまごついた。

「おばあさまを見ていると、そんな気がするのよ。」

と、福子はしみじみ言った。

良人は浮かない顔で、福子を見ていた。

「分るよ。」

しばらくして、ただ、こう言っただけだった。

良人には自分の気持が分ってもらえるのだと、福子は心にしみて、仕合せを感じた。せめて、良人と二人は、おばあさまを純粋な眼で見守っていてあげたいと、福子は祈るような気持だった。

或る日、福子が本家へ行くと、めずらしく嫂たちが寄り合って、茶の間で何か相談事をしているところだった。

「あら、福子さんがいらっしった。」

みんな喜んで迎えてくれた。

「本気なお顔をして、なんの御相談?」