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おもと

万年青

矢田 津世子

「婦人日本」毎日新聞社、1942(昭和17)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,043 字 · 13 页

青空文庫

福子が隠居に求めるのは、祖母の愛情だけだった。

このほかに、何んの要求もないということで、二人は親密に結ばれているようだった。

「あした、お天気だったらな、お前さんの家へ行くつもりだからね。」

隠居は、そのことをよほど前から楽しみにしていたらしく、乗り出して言うのだった。

「ほんとうですの、おばあさま。わたしね、おでんこさえてお待ちしてますわ。」

「お前さんのおでんは、いっとう旨いよ。わたしゃ、あれがあれば何んにもいらない。」

「ついでに、かん酒もね。」

「かん酒?」

と、隠居は、怪訝そうにした。

「おでん、かん酒って云うでしょう。」

「そうかい、そうかい。」

隠居と福子は、声をたてて笑いあった。

翌日、隠居は朝の中に出かけてきた。

ちょうど日曜日で、良人も早くから待ちかまえていた。

「春さん、春さん、その包みをこっちへ持っておいでなさい。」

隠居は、附き添ってきた小婢から包みを受け取ると、ゆっくりかかって一つ一つ取り出した。地方からの珍らしい到来物で、自分の分を今まで取っておいて、二人を喜ばせようと持ってきたのだった。

「おばあさんは相変らずだな。」

良人は、包みをあける側から手を出して摘まんだ。