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みっつのめがね

三つの眼鏡

夢野 久作

「九州日報」1922(大正11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,731 字 · 4 页

青空文庫

姉さんが泣き出しましたので、祖母さんがお座しきから出てくると、暗い処で摺鉢につまずいて足をたがわかしてしまいました。お父さんが驚いて介抱をし、今度は自分で御飯の支度をしようとしますと、今度は肝腎のマッチが無くなりました。どこを探しても見当らないので、お父さんは近所までマッチを買いに行かれた留守に、武雄さんが帰って来て、

「御飯御飯」

と怒鳴りながらお茶の間へ座り込みました。

お姉さんは泣いています。お祖母さんはうんうんうなっています。

「どうしたのです」

といくら尋ねても返事をしません。武雄さんはお腹が空いて泣き出しました。

「お母ちアん」

けれどもお母さんは返事も何にもなさいませんでした。そこへお父さんが帰って来られて、

「武雄、お母さんが見たければ、その眼鏡を三つとも掛けて見つけろ。そうして御飯を食べさせてもらえ」

と云って、お倉の中へ入れられました。

お倉の中へ入れられた武雄さんは、大あばれにあばれて泣きましたが、そのうちに泣く力も無くなる位お腹が空いてきました。力も何も無くなって冷たい板張りの上に寝ながら、「ああ、お母さんがいらっしゃると、こんな時には直ぐにあやまって御飯を食べさせて下さるのになあ」