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さんのじりょこうかい
三の字旅行会
大阪 圭吉
「新青年」1939(昭和14)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,658 字 · 19 页
「失礼しちゃうワ。そんなもの、あたしンじゃアなくってよ?」
いい捨てて向きなおると、すたすたと出口のほうへ歩み去り、ぷい、と見えなくなってしまった。
一方改札口では、これ又一騒動持上っていた。何思ったか例の案内人は、宇利氏の背後から押しのけるようにして柵を飛び越そうとしたが、宇利氏に引きとめられて、しばらくゴテゴテと押し合い揉み合い、やがて馳けつけたほかの駅員達に取押えられて、どうやら観念したらしく、事務室のほうへ連れて行った。宇利氏は再び向きなおって、さっさと仕事をつづける。静かなものだ。
その晩、非番になった宇利氏は、赤帽溜へやって来て、ボンヤリしている伝さんへ、笑いながら切りだした。
「おい、伝さん。しっかりして呉れよ。……いったいお前さんは、少し講談や小説本に夢中になり過ぎるからいけないんだ。ふン、三の字旅行会だなんて、飛んでもないヨタ咄にひッかかってさ。あんなものは皆んな出鱈目だよ。僕だって、もう暫く前から、あの案内人や、お客のことには気づいていたんだ。しかし僕は、お蔭でお前さんみたいな飛んでもない勘違いはしなかったよ。第一、君は、その三の字旅行の婦人客達は、一定の地方からやって来ると聞かされたろう。