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さんにんのそうせいじ

三人の双生児

海野 十三

「新青年」1934(昭和9)年9、10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,806 字 · 87 页

青空文庫

この点からいってもあんたの持ってきた話の中には三人の双生児という重大な謎を解くに足るものがすこしも入っていないじゃありませんか。だからたいへんお気の毒だけれど、あたしはあんたを兄とも弟とも認めることができないのよ。ネ、わかるでしょう」

畳に身を伏せて、嗚咽していた真一は、このとき俄かに身体をブルブルと震わせ始めた。それは持病の発作が急に起ってきたものらしかった。彼は苦しげに胸元を掻きむしり、畳の上を転々として転がった。あまりに着物を引張るので、その垢じみた単衣はべりべり裂け始め、その下から爬虫類のようにねっとりした光沢のある真白な膚が剥きだしになってきた。そして妾は、はからずもそこに遂に見るべからざるものを見てしまった。真一の背にある恐ろしき瘢痕!

「おおいやだ――」

彼の話に勝って、それはなんという気味の悪い瘢痕だったろう。それは確かに生きている動物のように蠢めいた。或いは事実そこに腕のような活溌なものが生えていたのかもしれない。そのとき不図妾は、いままでに考えていなかったような恐ろしいことを考え出した。それは真一の瘢痕のあるところに、もう一つ別の人間の身体が癒着していたのではなかろうか。