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さんにんのそうせいじ
三人の双生児
海野 十三
「新青年」1934(昭和9)年9、10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,806 字 · 87 页
それは狼狽のあまり妾が他の品物と一緒に抛りこんでしまったものに違いなかった。
貞雄は、そのコップを取り上げて、明りの方に透かしてみたり、ちょっと臭を嗅いでみたりしていたが、やがて妾の方を向き、
「珠枝さん、ハッキリは分らないが、どうやらこれは砒素が入っていたような形跡がある。無水亜砒酸に或る処理を施すと、まず水のようなものに溶けた形になるが、こいつは猛毒をもっている。普通なら飲もうとしても気がつく筈だが、当人が酒に酔っているかなにかすれば、気がつかないで飲んでしまうだろう。砒素は簡単に検出できるから、あとで検べてみよう。しかしまず間違いないと思うネ」
「まア、水瓶の中に砒素が入っていたの、まア恐ろしいこと。一体誰がそんなものを入れたのでしょう」
「いや、今に僕が分らせてみるよ」
妾はホッと息をついた。貞雄の来てくれたお蔭で、妾の疑問としていたところはドンドン氷解してゆくのであったから、感謝をせずにいられなかった。どうか今夜はぜひ泊ってくれといったけれど、貞雄は中々承知しなかった。
「随分貴方は頑固なのネ。貴方と妾とは従兄妹じゃありませんか。泊っていったって何ともないじゃないの」