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さんにんのほうもんしゃ

三人の訪問者

島崎 藤村

「開拓者」1919(大正8)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,196 字 · 7 页

青空文庫

唯、私はお前に忸れたかして、お前が側に居て呉れると、一番安心する。」斯う私が言うと、「貧」は笑って、

「私に忸れてはいけない。もっと私を尊敬してほしい。よく私に清いという言葉をつけて、『清貧』と私を呼んで呉れる人もあるが、ほんとうの私はそんな冷かなものでは無い。私は自分の歩いた足跡に花を咲かせることも出来る。私は自分の住居を宮殿に変えることも出来る。私は一種の幻術者だ。斯う見えても私は世に所謂「富」なぞの考えるよりは、もっと遠い夢を見て居る。」

「老」が訪ねて来た。

これこそ私が「貧」以上に醜く考えて居たものだ。不思議にも、「老」までが私に微笑んで見せた。私はまた「貧」に尋ねて見たと同じ調子で、

「お前が『老』か。」

と言わずには居られなかった。

私の側へ来たものの顔をよく見ると、今迄私が胸に描いて居たものは真実の「老」ではなくて、「萎縮」であったことが分って来た。自分の側へ来たものは、もっと光ったものだ。もっと難有味のあるものだ。

しかし斯の訪問者が私のところへ来るようになってから、まだ日が浅い。私はもっとよく話して見なければ、ほんとうに斯の客のことは分らない。