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さんじゅうねんごのせかい

三十年後の世界

海野 十三

「少年読売」1948(昭和23)年3~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页

青空文庫

空気かぶとは、頭にすっぽりとはいる円筒形のもので、肩のところで、ぴったりと身体についていた。そして空気かぶとの大部分は、透明な有機ガラスでできていたから、すこしはなれて見ると、そういうかぶとをかぶっているのかいないのか、区別がつかないほどだった。この中へ送りこむ酸素タンクは背中にとりつけてあった。

艇外へ出た作業員たちは、みんな火星がはじめてであったから、火星の引力になれていなかった。そのために彼らは、意外な失敗をくりかえした。つまり、火星では重力が地球の重力の三分の一しかない。だから一メートル高くとびあがるつもりでとびあがると、それより三倍高く三メートル上まで身体があがってしまうのだ。これは愉快なことでもあったが、同時によけいなこぶをこしらえる原因ともなった。

火災は完全に消えた。マルモ隊長は、それにつづいて、損傷した穴の修理作業に、すぐ取りかかることを命じた。隊員たちは休みなしに働かなくてはならなかった。そうであろう。ここで損傷個所をそのままにしておいたら、どんな突発事故によって、さあ火星から離陸だといったときに、たいへん困る。だから火災が消えたら、こんどは何をおいても、艇に穴のあいた個所を修理しておかねばならないのであった。