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さんじゅうねんごのせかい

三十年後の世界

海野 十三

「少年読売」1948(昭和23)年3~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页

青空文庫

林の中の怪

正吉とキンちゃんとが火星の砂漠の上に立って、空気かぶとを両方からよせあって、なにかしきりに話をしている。

二人とも、専門技術者ではないので、本艇の修理には役に立たない。だからいまちょっとひまなわけである。

ちょっと二人の話を、聞いてみよう。

「ねえ、ちょいと。あっしといっしょに、あそこまで行って下さいな。いいじゃないかね」

キンちゃんが正吉にねだっている。

「いってやっでもいいが、そんな気味のわるい林のところへいって、なにをするつもりだい」

正吉が、うしろの巨木の林をさしていう、その巨木は、地球の木とはちがい、ぼそぼそしたやわらかい下等な植物のように見えた。それはどことなくスギナやシダるいに似ていた。しかもその幹はたいへん太いものがあって、人間が四、五人手をつないでも抱ききれないほどのものもあった。キンちゃんは、その木のそばへ行ってみたいというのだ。

「あっしゃね、あの木が、料理をすれば、けっこう食べられるように思うんだ。ちょいとそれを調べてみたくてね。もし、うまく火星料理ができたら、第一番にお前さんに食べさせてあげるよ。だから、ちょっと行って下さい」