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さんじゅうねんごのせかい

三十年後の世界

海野 十三

「少年読売」1948(昭和23)年3~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页

青空文庫

「ひとりで行くのは、こわいのかい」

「こわいことはないさ。しかし気味がわるいんでね」

「じゃあやっぱりこわいんじゃないか。おかしいなあ、大人のくせに」

正吉はキンちゃんについて、林の方へ歩いていった。ほんとうは、正吉も気味がわるくてしかたがない。

「ねえ。あっしゃどういうわけか、身体がふわふわしてしょうがないんだがね」

「それは重力が小さい関係だよ」

「そうですかねえ。なんだか水の中を歩いているような気がするよ。さっき、石につまずいてひっくりかえったが、そのときね、からだはふわッと地面へあたりやがるんだ。ちっとも痛かないんだから、妙てけりんだ」

「地球の上なら、さっそく鼻血を出したところだろうね」

「おっと、さあ来たよ。なるほど、この大木め、いやにぶかぶかしているよ。これなら料理すれば食えるね。すこし切って持っていこう」

キンちゃんは、小刀をだして巨木の幹を切り取ったり、枝や葉を切り落したりして、料理に使うだけのものを集めだした。正吉は、それを見ているのには退屈して、林の中へどんどんはいっていった。すると、池のふちへ出た。池というよりは、沼地といった方がいいかもしれない。