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さんじゅうねんごのせかい
三十年後の世界
海野 十三
「少年読売」1948(昭和23)年3~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页
キンちゃんが正吉の腕をゆすぶる。
「アルファベットだよ。人間の使う文字だ」
「そうかい。なんだ、おどろかされたね。それじゃ、この塔は地球からとんで来たものじゃないか。中には、うんとごちそうが入っているんだろう」
キンちゃんは、ずばりといった。
まさか――と、正吉は思ったし、カンノ博士たちも、そこまでは考えなかった。
ところがキンちゃんのいったことはだいたい的中したのだった。
文字を読んでみると、次のような文章になった。
「マルモ探検隊に贈る。この資材を有効に使って、大探検に成功せられるよう祈る。ニューヨーク市マンハッタン街、世界連盟本部科学局より」
読み終って、カンノ博士たちは、へたへたとその場にしりもちをついた。それは緊張の頂上から、安心の谷へ、一度に落ちたからであった。
他の遊星と出会いおそろしい争闘がはじまるものと覚悟して、おそるおそる近づいた光る怪塔は、そのような恐怖すべき危険なものではなく、そのあべこべのものだったのである。まったくそんなことを予期もしていなかったのに、マルモ探検隊のことを心配して地球上から見まもってくれていた世界連盟本部からの温かい貴重な贈物だったのである。