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さんじゅうねんごのせかい
三十年後の世界
海野 十三
「少年読売」1948(昭和23)年3~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页
土地がせまくなったところへ、海外から大ぜいの同胞がもどって来たので、たいへん暮しにくくなり、来る年も来る年も苦しんだことを思い出した。中でも一番苦しかったのは食糧だった。
「ああ、そうそう」と、正吉はいった。
「ねえ区長さん。田畑や果樹園はどうなっているのですか。地上を攻撃されるおそれがあるんなら、地上でおちおち畑をつくってもいられないでしょう」
「そうですとも、もう地上では稲を植えるわけにはいかないし、お芋やきゅうりやなすをつくることもできないです。そんなものをつくっていても、いつ空から恐ろしいばい菌や毒物をまかれるかもしれんですからね。そうなると安心してたべられない」
「じゃ農作物は、ぜんぜん作っていないのですか」
「そんなことはありません。さっきあなたがおあがりになった食事にも、ちゃんとかぼちゃが出たし、かぶも出ました。ごはんも出たし、ももも出たし、かきも出た」
「そうでしたね」
「では、まずそこへ案内しますかな。ちょうどよかった。すぐそこのアスカ農場でも作っていますから、ちょっとのぞいていきましょう」
アスカ農場だという。地上には田畑も果樹園もないと区長さんはいっている。