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さんじゅうねんごのせかい
三十年後の世界
海野 十三
「少年読売」1948(昭和23)年3~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页
(早く、早く。あの人が梁から落ちれば、もうなんにもならない)
じつにきわどいところで、彼の身体は梁でささえられている。まるで天秤のようだ。
正吉は、やっとのことで、その人の身体をつかまえた。つかまえたのと、その人が息を吹きかえしたのとほとんど同時であった。
「あーァ」
その人は呻った、見るとそれは料理番の若者で、キンちゃんとよばれている、ゆかいな男であった。
「キンちゃん。どうしたの。しっかり」
正吉は、梁のむこうへ落ちて行きそうなキンちゃんの身体を、一所懸命おさえながら、キンちゃんをはげました。
「あッ、こわいこわい、おれは気が変になる。助けてくれッ」
キンちゃんは、両手で顔をおさえて変なことを口走る。
「キンちゃん。おかしいよ、そんなにさわいじゃ。ぼくは小杉だよ」
「小杉?」
キンちゃんは、ようやく目をあいて、正吉を見た。そしてホッと大きな溜息をついた。おなじみの正吉の顔を見て、安心したのであろう。
「こんなところで、何をしていたの」
と正吉がきくと、キンちゃんはまた顔をしかめて苦しそうにあえぎだした。
「こわい、こわい、正ちゃん。その窓から外を見ない方がいいよ。