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さんじゅうねんごのせかい
三十年後の世界
海野 十三
「少年読売」1948(昭和23)年3~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页
「このごろどこでも気絶ばやりだね。だから僕もいつもこうして気つけ用のアンモニア水のはいった小さいびんをポケットに入れてもっている」
そういってカコ技師は、透明な液のはいっている小びんを出してみせた。
「それを貸して下さい。それを持って艇長のとこへ行ってきますから……」
「だめだよ、正吉君、艇長はいまひるねをしておられる。一時間ばかり、誰も艇長を起すことは出来ないのだ」
「ああ、つまらない」
「つまらないことはないよ、機械室へ来たまえ。これから偵察ロケットを発射させるんだから」
「偵察ロケットですって。それは何をするものですか」
「本艇のために、目の役目をするロケットだ。このロケットには人間は乗っていない。電波操縦するんだ。だからこのロケットはうんと速度が出せる。これを発射して、本艇よりも先に月世界の表面に近づかせる。いいかね。ここまでの話、分るかね」
「ええ、分ります」
「その偵察ロケットには、テレビジョン装置がのせてある。だからそれがわれわれの目にかわって月世界の方々を見る。それが電波に乗って本艇へとどく。本艇ではそのテレビ電波を受信して、映写幕にうつし出す。