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さんあくにんものがたり
三悪人物語
山本 周五郎
忍術千一夜 第二話
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,990 字 · 58 页
「なにか御用でございますか」
「倉は明いているかい」
八百助は立ったままぶっきら棒に云った、
「五六日うちにこれだけの荷が入るんだがね、ちょっと見てくれ」
出されたものをみると船荷証券が七枚、米五千俵、呉服太物四千反、糸綿千二百貫、海産物千二百貫、酒五百樽、醤油味噌八百樽、油三百樽という巨額な荷だ。出平は眼をむいてこの若者の顔を見直し、それからまたあわててその船荷証券を見た。兵庫の菱垣船で有名な和田屋忠兵衛の証券である。
「これはあなたの荷でございますな」
出平の態度がぐっと変わった、態度ばかりではない眼つきも顔つきも変わった、「で、なんでございますか、こういう荷にはたいてい御融通をすることになるのですが、そこのところは……」
「その証券だけじゃ無理だろう、これをつけるから五千両ばかり融通してもらえないかね」
八百助はこう云って、持木屋の手形を差し出した、
「四五日の小遣いがほしいんだ、ほんの五箱でいい」
四五日の小遣い五千両と聞いて、出平はひそかに舌を巻き同時に貪欲の知恵を巻いた。この若僧めなんにも知らねえな、持木屋の手形なら金も同様だ、よし五千両で額面そっくりふんだくってやれ、貸す五千両は船荷証券で持木屋から借り出せばいい、こいつは近来にない福の神だ、こう思ってひざを乗り出した。